LiveReport08






2010.11.06(セット・リスト)

1)雨ニモマケズ〜ひとり/太宰治(寺澤裕久・藤中浩樹)
2)パラレルワールド/ルソー(scope)
3)曽根崎心中/近松門左衛門(寺澤裕久・藤中浩樹)
4) 小さい秋みつけた/サトウハチロー(粟井識裕・寺澤裕久)
5) シークレット・ラベル/松本潮里(寺澤裕久)
6)鬼神(scope)
7)カモメ(藤中浩樹)
8) 0or1(寺澤裕久・小寺祥文)
9) 夜明けに生まれ夕暮れに去る(寺澤裕久)
10) ヘッジホグ(scope)
11) 人間失格/宮澤賢治(寺澤裕久・藤中浩樹)


セイジャクノオト2を見て(聴いて)    小寺祥文
11月6日(土)吹田メイシアター小ホールでの同ライブを見た。
この企画はSCOPEのリーダー寺澤氏がバンドとは別のプロジェクトとして今年3月に行ったイヴェントのパート2である。
しかし今回は、ベースの藤中氏のみならずヴォーカルの粟井氏も加わり、ラインアップとしてはさらにスコープ色が強まった。「静寂の音」というタイトル自体が元々、“わかるようでわからない、だからおもしろい”名前であり、前回は写真にインスパイアされた感情をインプロで演奏する、というスタイルで成功をおさめた。その2回目で、今度は違ったスタイルをとると聞き、また発表されたばかりのアルバムからも演奏する、というので「一体どうなるのか、が興味津々であった。フライヤーにはオスカー・ワイルドや近松門左衛門、太宰に芥川、宮澤賢治などの作家名や作品名がパズルのごとく並び、“テーマは文学”ということだけが垣間見える、という状態で会場へ行った。
 ステージ中央にスクリーン、左右には3台のマックブックというおよそロックのライヴらしからぬ雰囲気。いざ演奏が始まると古今東西の“文豪”等の作品をネタに練られた打ち込みにのせてインプロあり、映像あり、朗読あり、賢治作品では東北弁ナレーションありの「なんでもあり」、いや上品に言えば『総合芸術』である。
 そう、スコープはそもそも最も“正しい意味でのプログレ・バンド”なのであった。型にはまることなく、常に
新しい分野に「挑戦する」バンドなのであるからこそ、こういう“型破りな”スタイルこそが彼らの『スタイル』なのであろう。「セイジャクノオト」は「静寂な芸術から紡ぎだされた音」と解するのが適当なのかも知れない。演奏曲は『人間失格』やニューアルバムからの『孤独な散歩者の夢想』といったスコープらしいナンバーに加え、粟井氏の作になる少女の声をサンプリングしたかわいいサウンド・コラージュ『小さい秋、見つけた』、藤中氏自身の朗読で始まる『かもめ』(かもめのジョナサンより)などバラエティに富んだ作品群で構成され、その「文学作品」から得られた寺澤氏の感情がディストーションの深くかかったギターから放ちだされた。藤中氏もいつものスタインバーガーをリッケンバッカーに持ち替え、クールでありながらワイルドなベースを会場に響かせた。聴衆もクラシックを聴きに来たかのように演奏に集中し、全曲の終了後に拍手が送られる、独特の雰囲気で締めくくられた。
 ただ、最後に筆者の要望を加えておく。このようなライヴが折角、市民に向けて無料で行われるのであれば、もっと幅広い市民に聞いてもらわねば勿体ない。良質の音楽が人々に喜びを与え、閉塞感の高まる社会に一筋の希望をもたらすのであれば、なおさらである。
[2010年11月13日記す]